三角ホーを使用した物理的除草術によるヒエ対策

緒言

現代の稲作において多くの農家が田植えと同時、
もしくは田植え直後に水田内に除草剤を散布している。

田植え後に発生する雑草はノビエが代表的であり、
この防除がうまくいかないと株間にノビエがびっしりと生える。

株間がノビエに覆われることで
本来はイネが吸収するはずである栄養分が奪われるだけでなく
イネがノビエの影に隠れれば日当たりも悪くなり光合成の効率も落ちる。

すなわちイネの成長に悪影響が及ぶのである。

しかしながら除草剤を効かせるためには
散布時に水田に水を張り、3日間は灌水状態を保ち
7日間はかけ水および落水をしない
と言った使用方法を守らなければならない。

簡単なようだが、圃場の土質などによっては水が抜けやすかったり
ネズミやモグラ等の野生動物が掘った穴から水が抜けてしまう
という事態も起こるものであり、
上記の使用方法を失敗することもあるのだ。

また、土壌の性質によっては使用方法を守ったとしても
除草剤の効きが悪いこともある。

ノビエが生えてしまった場合には
クリンチャーを代表とする除草剤の散布で対処できるのだが
農薬の使用量及び金銭的負担が増える。

ところで有機農法に於いては
除草作業にリンク1で紹介されているような器具を用いて
除草する技法が用いられている。

https://www.ennou.com/s-suidenjoso.html
リンク1

しかしながら器具を購入するのにも費用がかかり、
さらにこの器具の汎用性は決して高くないものと思われる。

そこで、畑の耕作でも広く用いられる三角ホー(図1)により
水田におけるノビエの除去を試みたので下記の通り報告する。

図1 三角ホー

方法

今回の圃場は山にある6畝(約600㎡)ほどの水田である。
田植え時に除草剤(アッパレZ)を同時散布し、
その後の水管理も悪くはなかったと思われるが
一部においてノビエの発生が確認されている。(図2)

図2 株間に生えるノビエ


水を張った状態の水田において
三角ホーの底辺(ギザギザの面)を用いて
ノビエが生えている田面をならすように掻く。
(下記動画のように実施)

三角ホーを正確にコントロールできる範囲として
1列を歩く間に、自分を中心に4条に対して実施する。

浮いたノビエはできるだけ土の中に埋めるように
足で踏みつけたり、土を寄せるなどする。

期待する結果と予想される問題点

対策を実施した場所において
7割程度の除去ができていれば成功とする。

イネの近くにあり除去できなかった個体や
除去を免れる個体もあるだろう。

また、土に埋もれずに水面を漂ってる個体は
再度根を下ろす可能性がある。

問題点としては三角ホー、もしくは歩行により
イネを傷つけてしまうことも予想できるが
イネは強い植物なのでこの可能性は低いものと考える。

結果

作業は田植え30日後の6月22日 午前であった。
作業時間は約2時間で小休止を挟みつつも
腰を下ろしての休憩はなかった。

畦際の雑草は残し、株間の個体のみに実施した。

作業終了後の様子は図3の通り。

図3 除草術施行直後の水田

株間にはほとんどノビエが認められない。

しかしながら一部は土に沈み込めきれなかった。(図4)

図4 沈めきれなかったノビエ

発見した浮きノビエについては随時、踏みつけて土中に沈めるが、
全ての個体に対してしらみ潰しに実施するには
時間がかかりすぎるため、今回は行わないこととした。

6月25日からは水田の水を抜き中干しを開始した。

6月27日時点での報告は以上。

中干し終了時にノビエの様子を観察し
結果の報告及び考察をしたいと思う。